あなたはなぜ、働き続けるのか?残りの人生で一番大切なものは何ですか?

暮らし

「定年退職制度は、急激な少子高齢化社会ではもはや不適切である。」

経済協力開発機構(OECD)は1月に発表した対日経済審査報告書において、日本は経済財政の持続可能性の確保と生産性の向上、そして急速に進む人口高齢化による経済的・社会的影響への対処するためには定年退職を廃止し、労働力を確保すべきと主張しています。また、定年制は世界標準ではなく、米国や英国では、年齢差別に当たるとして禁じています。

60歳以降、定年という概念がなくなったとき、私たちは自分の判断で働き方を選択しなければなりません。

高齢者の就業

総務省統計局が発表した統計では、2022年の65歳以上の高齢者就業数は、2004年以降、19年連続で前年に比べ増加して912万人、就業率(65歳以上人口に占める就業者の割合)は25.2%となっています。

一方、欧米諸国における就業率を見ると、米国が18.6%、カナダ13.9%、イギリス10.9%、ドイツ8.4%、イタリア4.9%、フランス3.9%などとなっており、年齢差別や働く権利を主張する欧米諸国よりも、定年制がある日本の方が高齢者の就業率が高い水準にあります。

アリとキリギリス

イソップ萬話にアリとキリギリスの物語があります。

ご存じの通り、夏に勤勉に働いたアリと自由に遊んで過ごしたキリギリスの話です。結末は、夏に冬の食料を蓄えるために一生懸命働いたアリは生き残り、遊んで過ごしたキリギリスには悲惨な現実が待っていました。

この話は教訓として、生きるために一生懸命働くことの大切さを伝えています。しかし、勤勉に働いたアリは人生を楽しめたかという疑問が残ります。

最近、注目されている著書にビル・パーキンスが書いた「DIE WITH ZERO」という本があります。この本のまえがきにアリとキリギリスの萬話が出てくるのですが、「アリの末路」については、非常に興味深く考えさせられました。

果たして、アリの人生は奴隷のように働くだけで、ほんとうに楽しかったのかと思います。もちろん、生きるためには働かなければなりません。しかし、働くこと以外にも楽しみたいことがあったはずです。

今を大切に生きる

多くの人は、今の生活が永遠に続き、人生が果てしなくあるような感覚で毎日を過ごしています。しかし、人生には必ず終わりがあり、残された時間のなかで最大限に人生を楽しむ方法を常に考える必要があります。

大切なのは、今しかできないことにお金と時間を使うことです。お金を無駄にすることを恐れて機会を逃すのはもったいないですし、働くことだけに時間を使うこともつまらないと思います。自分にとって大切なこと、幸せを感じられることを知り、その経験にお金と時間を使うことはとても大切なことです。

節約してお金を貯めたり、汗水流して働くことはとても大事なことです。しかし、少し視点を変え、今やりたいことや喜びにお金や時間を使うことも良いのではないでしょうか。

健康なくして富に価値なし

歳を重ねてくると、残念なことにやりたくてもできなくなってくることがあります。自分では若いつもりでも、加齢によって確実に体力と気力は衰えます。

たとえば、60歳を超えて急にサーフインを始めたいと思っても、身体能力が衰え、とてもサーフインができるような体力はないでしょう。また、足腰が弱くなると遠くへ旅行に行ったりすることが困難になります。気力が衰えると外出することさえ面倒になるでしょう。

多くの人にとって、旅行に行くことができない理由は、若いときは「時間」だったものが、歳を取ってからは「健康上の理由」に変わるようです。

人生の幸福感を感じるのは「人生の思い出」です。思い出を積み重ねることで人生を豊かに生きることができます。健康に不安がなく、様々な体験ができるうちに、たくさんの思い出をつくりたいものです。

歳をとり、経験する機会を失ってから「もっと若いときにすべきだった」と後悔することだけは避けたいです。

Your Money or Your Life

「Your Money Your Life」(ビッキー・ロビン、ジョー・ドミング著)の本では、収入は必ずしも労働の時間単位の価値を表していないので、年収7万ドルの人より年収4万ドルの人の方が1時間あたりに得ている価値は大きいかもしれないと記しています。

つまり、年収7万ドルの人は、その仕事に必要なエネルギーやコスト(長い通勤時間・相応しい衣服費・長時間労働・交際費など)を使い、また何かを楽しむ時間も少なくなるため、結果として年収4万ドルの人よりも貧しくなってしまう可能性があるようです。仕事を比べるときは、この隠れたコストを考えることが大事になります。

選択の意識

人生を豊かに生きるためには、今経験できるはずの喜びを先送りすることなく、明確な将来に向けたライフプランを持ち、同時に今を楽しむことも忘れないような生き方が大切です。

人生は、果てしなく出世や高収入を目指すものではありません。また、自分や家族を大切にせず、ただ漠然と働くものでもないと思います。人生では、常に目の前に選択肢があり、自分の価値観が反映されます。自分らしく豊かに生きるためには、今を大切にして「時間」と「お金」を最大限に生かした賢明な選択をしていくことが大事です。

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