先日、日経平均株価が4万0000円を超え、過去最高値を更新しました。現在の株高は、バブル期を知るシニア世代にとっては、あまり高揚感がありませんが、若い世代を中心に新NISAを機に株式投資を始めた人が多く、早く上昇相場に乗れるかどうかが最も重要であると考えているようです。
物価高のインフレが進むなか、年金だけの老後資金では不安なシニア層にとっても、今後、資産運用への関心は確実に高まっていきます。その際、投資を始める前に、資産運用の基本ルールを理解しておくことがとても大事になります。
まずは、お金を3つのグループに分ける
シニア世代のなかには、退職金などでまとまったお金があるので、少しでも資産を運用して増やしたいと思う方が増えているようです。
実際、預貯金を取り崩すだけの場合と少しでも資産を増やしながら預貯金を取り崩す場合では、資産寿命に大きな差がでてきます。シニア世代にとっては、上手に資産運用できることが老後の生活が豊かになることにつながりますので、非常に関心あるところです。
退職金などのまとまったお金が入ると、金融機関からの営業を受けることもあります。その時のためにも資産運用の基礎知識は持っておき、金融機関の営業に勧められるまま、株式や投資信託を数百万円購入することだけは避けたいものです。
資産運用は、いきなり投資するのではなく、自分の資産を3つのグループに分け、それぞれに使うお金の目的や時期に応じて検討することが大事です。
すぐに引き出すことができるお金
まずは、普段の生活費や病気やケガなどのアクシデントに備えて自由に引き出すことができるお金です。普段の生活費とは、収入がなくても1年間は生活ができるお金が目安となります。最低限必要な1年間分の生活費は預貯金として残しておきたいです。併せて、急な病気やケガなどのアクシデントに備えるお金も準備しておきます。
このお金は、必要なときに自由に換金できることが重要になります。必要な時にすぐに引き出すことができなかったり、中途解約のために手数料などのコストが発生したり、引き出す時期によって金額が変動するようなものは不向きですので、普通預金に預けていつでもATMなどでいつでも引き出せるよう用意しておくことが大事です。
将来に備えて目的のあるお金
次は、将来に備えて目的のあるお金です。
たとえば、数年後に予定している海外旅行の費用や家のリフォーム代、子どもの結婚式援助費用などが当たります。このお金は、将来使う時期まで減らない安全性を重視することが大事になりますので、定期預金や国債での運用がおすすめです。
当分使わないお金
最後に、当分使う予定のないお金です。
このお金は、当分使う予定がない余裕のあるお金なので、株式や投資信託、外貨預金などの投資に回すことができます。物価高で低金利の時代では、資産価値は目減りしていきますので、老後生活に向けて資産寿命を延ばすために、収益性に着目し資産を増やすことを検討したいお金になります。
資産運用の注意点
お金を3つのグループに分け、「当分使う予定のないお金」で投資を始める検討に入るときに、注意すべき点が4つあります。
- リスクとリターンの関係性を知る
「リスク」は危険という意味ではなく、値動きの幅を意味します。値動きの幅の大きい商品はリターンが多くなる分、リスクは高くなります。逆に値動きの幅の小さい商品はリターンが少ない分、リスクは低くなります。一般的に、預貯金や国債はローリスク・ローリターンです。これに対し、株式は高いリターンが期待できる一方、損をする可能性も大きいハイリスク・ハイリターンです。投資信託は、商品の種類によってローリスク・ローリターンのものも、ハイリスク・ハイリターンのものもあります。
最近、投資詐欺が増えているようです。ローリスク・ハイリターンをセールストークにするケースもあるようですが、「ローリスク・ハイリターン」とか「絶対儲かる」ということはあり得ませんので注意が必要です。
- 自分のリスク許容度を知る
投資には、リスクが伴いますが、価格の変動にどれだけ耐えられるのかが重要になります。一般的には、資産や収入が多く、投資経験が長い人ほど、価格の変動に耐えられるのでリスク許容度が高くなります。シニア世代は、現役時代と違って運用に失敗したときに、取り返す時間が短く、損した分を別の収入で穴埋めすることが難しいので、リスク許容度は高くないことを自覚することが大切です。
- 投資は余裕のあるお金で行う
投資は、3つのグループに分けたお金のうち、いざというときに使うお金と減らしてはいけないお金を除いて投資することが絶対条件となります。
投資を始めて日の浅い人が、損した分を取り戻そうと、どんどん投資金額を増やしてしまうのは、よくあることのようです。反対に投資で儲かると面白くなってさらに投資金額を増やす場合もあるようです。エスカレートして、使ってはいけないお金まで投資に回すことがないよう、投資していいお金の範囲を決めておくことが大事です。
- 分散投資を心がける
投資の有名な格言で「卵を一つのかごに盛るな」という言葉があります。
複数の卵を一つのかごに入れて運んでいたとき、誤ってかごを落としたら、卵が全部割れてしまうので、卵を分けて運べば被害は少なくて済むという意味です。投資も集中投資せず、商品を分散して運用すればリスクが分散して大きな損害を免れるという教訓になっています。
また、売買のタイミングも一度にまとめて行わず、分散させることによって、高値づかみを防ぎ、底値で手放すことも避けられます。
投資の基本は。「長期」「つみたて」「分散」です。
まとめ
物価高・低金利時代のなか、金融機関に「お金をただ預けて眠らせておく」だけでは、現預金の価値が目減りし、生活が苦しくなります。そのため、自分の力でインフレ時代を乗り越えることが大事になり、これからの長い人生をより豊かに安心して暮らすためには、資産運用の必要性が高まっていきます。
今後、ライフプランを計画する上で大事になってくるのは、お金を預貯金で眠らせるだけではなく、お金を元手にして「自分のお金に働いてもらい、お金を増やす」ことです。新NISAも始まり、「貯蓄から投資へ」の機運も高まっています。これからは資産運用の基本ルールをしっかり理解し、賢い資産運用を行うことが重要です。