「2050年には、65歳以上のひとり暮らしが1083万人になる」
今後、人口減少が進み、高齢者のひとり暮らし世帯が急増し、2050年には65歳以上のひとり暮らしが全世帯の21%にあたる1083万人になると国立社会保障・人口問題研究所が発表した世帯数の将来推計で明らかになりました。
近い将来、シニア世代の「おひとりさま」が特別なことではなく、誰にでも起こりうるに日常的なものに変化していきます。これからは、時代の変化に対応した自分らしい生き方が求められます。
高齢者のひとり暮らしが急増
2050年時点の65歳以上人口のうち、ひとり暮らしの割合は、男性26%、女性29%になる見通しです。2020年時点と比較すると、男性9.7ポイント、女性5.7%上昇しており、男女とも単身化が大きく進んでいることがわかります。
また、2020年の国勢調査によると、50歳時点で一度も結婚したことがない割合は、男性で28%、女性で18%となっており、2040年には、男性29.5%、女性18.7%に達するようです。つまり、男性では約3人に1人、女性では5人に1人が未婚による「おひとりさま」になる時代が間近に迫っていることがうかがえます。
おひとりさま生活は、お金・健康・孤独など様々な不安を抱えます。しかし、不安を抱えて過ごすより、明るくポジティブに暮らしていきたいものです。
お金の不安は気持ち次第
ひとり暮らしの不安の一番は、やはりお金のようです。
しかし、老後の不安はお金といいながら、実際はいくらお金があれば安心かというと、よくわからない人の方が多いのではないでしょうか。その理由は、老後の収入と支出についてよく把握していない点が挙げられます。
2020年の総務省統計局の家計調査によると、65歳以上の高齢単身世帯の1ヶ月にかかる平均消費支出は約15万円となっています。
【単身世帯の1ヶ月平均消費支出】
- 食費 41,000円
- 住居費 21,000円
- 光熱水道費 12,000円
- 被服費 10,000円
- 保険医療費 7,000円
- 通信、交通費 18,000円
- 教育、娯楽、雑費 41,000円
合 計 150,000円
一方、年金受給額は厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和4年度)によると、その平均受給額は、国民年金が56,316円、厚生年金が144、982円となっています。この受給額を見て、不安を覚えるのは当然かもしれませんが、自分の年金受給額が把握できれば、その受給額に応じたやりくり生活は可能です。
住宅ローンや子どもの教育費など人生における2つの大きな出費がなければ、収入の範囲で暮らすことが老後のひとり暮らしの基本になります。つまり、身の丈で生きるための知恵がひとり暮らしには必要です。
「不安だと思うから不安になる」しっかり自分の財布の出入りが把握できれば、生活の知恵によって自由にひとり暮らしを謳歌できます。「なるようになる」楽観的な考え方が人生を豊かにします。歳を取ると使うお金も自然と少なくなるものです。
健康は節約の第一歩
ひとり暮らしの不安は、お金の次が健康です。健康とお金は密接な関係にあります。なぜなら、健康であることが節約につながるからです。
歳を重ねてくると、運動量が激減してきます。年々消費エネルギーが減り、皮下脂肪がたまり、体重が増えて肥満度が増します。そんな生活が続くと、糖尿病などの生活習慣病にかかるリスクも高まっていきます。まして、ひとり暮らしだ周りに口うるさく注意してくれる人がいません。自分で運動や食事などに気をつけ、健康でいるために節制することが大切になります。
年齢とともに、体が衰えてくることは仕方ありません。しかし、自分の身体を大事にしていくことを考えるだけで、健康に対する意識は変わってきます。健康的な生活が一番の節約になります。
しかし、ストレスを感じるような節制には注意が必要です。無理をせず、自分のペースを守って笑顔がこぼれるような生活が大切です。笑いは、免疫力を高め、認知能力の低下を抑えることが現代の医学でも証明されているようです。
見かけは大事
老後をひとりで暮らすとお金の使い方と健康には十分気をつけなくてはいけません。しかし、切り詰めるだけの節約だけでは、生活が楽しくありません。ひとり暮らしは自由度が高い生活ができるはずです。そのためには、世間の価値観に惑わされず、自分らしいお金の使い方をすることだと思います。
人生のなかで楽しくひとり暮らしの生活をするためには、心の豊かさを大事にした生活が大切です。慎ましい生活であっても凛とした品のある生活をしたいものです。無駄なものは削ぎ落し、本当に必要なものであれば、高価であっても迷いなく買い求めて、普段の生活では出費を抑える。生活を切り詰めても、一輪の花を買い部屋に飾るような生活を目指したいものです。
また、たまには、おしゃれをして食事にいったり、映画をみたり、コンサート鑑賞などに出かけるのも良いのではないでしょうか。こうした服装をすることで背筋が伸び、気持ちも引き締まります。自分自身が老け込まないためにも見かけをすっきり整えることはとても大事です。
実年齢に8掛した年齢を目標にするとシニア世代を輝いて生きることができるようです。
人生を楽観的に考える
「失ったものを数えるな、残されたものを最大限生かせ」これは、パラリンピックの父と呼ばれるイギリスの医師ハードビィッテ・グッドマン博士の言葉です。今できることに目を向け、過去に捉われず、未来をどう生きるかを教えてくれます。
老後資金は必要額ではなく、大切なのは貯めた金額の範囲で自分がどのような生き方をしたいのかを考えることが大切です。マスコミの報道は不安を煽るような情報を繰り返し流しています。しかし、いたずらに情報に流され不安がっても仕方ありません。
悲観的に考えず、楽観的に考えることが大切です。楽観的とは、根拠なくなんとかなるだろうではなく、将来起こるであろうことについて考え、早めにライフプランを立てることで計画的に行動することです。ただ不安がるだけでなく対策を打つことが大切です。
人生100年時代、まだまだ長い人生を心豊かに「過去にとらわれず、未来におびえず」今の生活を機嫌よく自由に楽しんで生きることが大事です。
(参考文献)
楽しく賢くムダ知らず「ひとり老後」のお金の知恵袋(明日香出版社) 保坂隆 2024年