｢こんなはずじゃなかった｣
人生100年時代、平均寿命も延びて定年後の働き方が多様化し、｢定年=引退（隠居生活）｣というモデルは既に過去のものとなっています。
近年は、｢経済的な理由｣と｢社会とのつながり｣から定年後も働き続ける人が増えています。内閣府の調査によると、60～64歳では約7割、65～69歳で約5割の人が働いています。とくに再雇用制度を利用している企業では、定年後も継続雇用される人の割合が約8割に達しているようです。
しかし、再雇用の現実は、給与が平均で約5割減少し、これまで培ってきた専門的な仕事から単純作業や補助的な業務に変わることも多く、やりがいを感じられない人も少なくないようです。
定年後の安定
人は誰でも安定を求めます。
とくに、定年を迎えたあと、長年働いてきた職場や環境で再雇用という形で残れば、勝手も知っているし、人間関係も築かれているため、｢ここにいれば大丈夫｣という感覚から安心感を持つはずです。
再雇用の現実
しかし、実際に始まって見ると、その安心感は思っていたほど心地よいものではないと感じる人も少なくありません。
かつては責任ある立場で意見を求められ、判断を下していたものが、年下の上司の指示に従うだけの日々を自分の経験や考えが尊重されないと感じることが多くなり、モチベーションの低下につながるケースがあります。
定年後の働き方を考える時、多くの人が直面するのは｢安全｣と｢尊厳｣の間にある葛藤です。
再雇用で働く場合、以前と同じ職場であっても権限と責任は失われ、役割は固定されて意見が軽んじられることがあります。
しかし、多くの人は新しい挑戦を考えても、｢今さら｣｢もう遅い｣といった言葉が頭をよぎり、年齢的な壁や生活の安定を失う不安から挑戦する勇気はないものです。
安全な居場所
そして、何より長年過ごしたこの場所には、まだそこに｢居場所｣があるような気がします。たとえ形だけでも、ここにいれば社会とのつながりを保てると思うと現状維持することが最も安全な選択と考えると思います。
しかし、安全であることと満たされていることは違います。心の奥で満たされていないと感じているのであれば、今の働き方を見直すことも必要です。
尊重されない環境に身を置き続けることは、少しずつ自分をすり減らし、かつての自分が持っていた誇りや情熱が薄れていきます。安全な場所にいるはずなのに、なぜか息苦しいそんな矛盾を抱えながら、日々をやり過ごすことになります。
自分らしく生きるための一歩
セカンドキャリアは、自分らしく生きるための小さな一歩です。安全な居場所を守ることは決して悪いことではありません。
ただその安全によって、給与の減少によるモチベーション低下や会社での立ち位置の変化に伴う自身のプライドやアイデンティティの揺らぎ、若手社員とのコミュニケーション不足や価値観の違いによる世代間ギャップに悩むのであれば、少し冷静になって自分の生き方を見つめ直すことも大切です。
私の場合、60歳で会社を辞めて個人事務所を設立し、いわゆるひとり起業を始めましたが、新たな人間関係も構築でき、毎日を自由に過ごしています。
再雇用で働く心構え
多くの人が選択する再雇用制度には、企業や働く人々にとって多くの課題があります。
まずは働く心構えとして、新しい役割を前向きに受け入れること、そして自身の経験や知識を次世代に伝えていくこと、過去の成功体験から離れて新人のつもりで仕事に向き合うことも大切になります。
いかに与えられた仕事だけではなく、自ら｢役割｣を見つけ出し、主体的に創造していく意識が大事です。そのためには、新しい学びを始めたり、職場外での人間関係の構築も必要かもしれません。
雇用形態が変わることで、給与や職場環境が変化することは一般的です。それらを現実として受け止め、不満や愚痴を口にするのではなく働き甲斐を見いだすことが大切です。
まとめ
セカンドキャリアの本質は、｢自分らしく生きること｣です。自分の理想として描いた人生を送るためにも、安全な居場所を求めるだけでなく、自分の新たな役割を見つけ、前向きに楽しみながら働くことが大切です。
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