人生100年の超長寿社会に突入するなか、「健康」と「介護」についての悩みや不安は年々大きくなっています。特に介護は、ある日突然やってくることもあり、親や自分自身の介護についても考える機会が増えています。
最近、ニュースで介護離職が増えていることを知りました。家族の介護と仕事との両立に悩み、会社を辞めてしまう人が多いようです。しかし、会社を辞めてしまうと、得ていた収入がなくなり、一生涯(退職金や年金含む)の収入が減ってしまいます。また、いったんキャリアが途絶えると再就職が難しくなるという現実もあるようです。
このような介護離職を避けるため方法として、2つの公的介護支援制度を利用する方法があります。
要支援と要介護
介護保険制度のサービスを受けるためには、「要支援・要介護」の認定を受けなくてはなりません。認定には、厚生労働省が基準を定める「要介護認定基準時間」をベースに区分された7段階により、自治体と介護認定審査会の判定が必要です。要支援・要介護の認定を受けると、サービスを利用する際に、自己負担額が1割(所得により2割~3割)となります。
「要介護」とは、入浴、排せつ、食事等の日常生活動作について常時介護を要すると見込まれる状態のことをいい、「要支援」とは、現在は介護の必要はないものの、将来要介護状態になる恐れがあり、家事や日常生活に支援が必要な状態をいいます。
介護離職者の現状
厚生労働省「令和3年介護保険事業状況報告(年報)によると、2021年度末時点の要介護・要支援認定者は689.6万人でした。この人数は、10年前の1.3倍、20年前の2.3倍であり年々増加しています。また、要介護・要支援認定を受けた人が利用する介護サービスの「居住介護サービス」と「施設介護サービス」はともに介護サービスの利用者が年々増加しているようです。
このように、介護を必要としている人の増加に伴い、家族等の介護を理由に離職する人も年々増えています。厚生労働省「令和4年就業構造基本調査」によると、1年間で介護を理由に介護離職した人は10万人以上にものぼっています。 男女別の内訳を見ると、女性の方が男性よりも圧倒的に多く、2022年の回答では全体の約8割が女性であることも明らかになっています。
公的介護支援制度
このように介護離職が年々増加しているなか、公的介護支援制度を知っておくことはとても大事なことです。
公的介護支援制度は、育児・介護休業法に基づく制度として、「介護休業」「介護休暇」「所定労働時間の制限(残業免除)」「時間外労働の制限」「深夜業の制限」「所定労働時間短縮等の措置」「不利益取扱の禁止」「ハラスメント防止措置」があり、雇用保険には、「介護休業給付金」があります。
介護離職をした人のうち約3割の方が、「介護休業」や「介護休暇」などの制度を知らなかったようです。
介護休業制度
介護休業は、介護を受ける対象家族1人につき3回、合計93日まで休業できる制度です。連続して93日間取ることも可能ですし、30日ずつ2回と33日など分割して取ることも可能です。
しかし、介護休業を取ることで介護の不安がなくなるわけではありません。介護休業期間に自分が介護を行うだけでなく、介護サービスを導入する施設入居を検討するなど、仕事と介護が両立できる体制づくりが大切となります。
介護休暇
介護休暇は、デイサービス等の送り迎えや通院など付き添いが必要なときに休暇が取れる制度です。対象家族1人につき、年5回まで取得でき、1単位ではなく、時間単位で取得することも可能です。また、介護サービス事業者との打ち合わせや要介護状態の祖父母のために社会人の孫が通院の付き添いをする際など幅広く利用できます。
介護休暇は、年次有給休暇とは別に取得できますが、有給か無給かは会社の規定によりますので確認が必要です。たとえ無給の場合でも、仕事は辞めなくて済むので、お金に困るリスクは軽減されます。
介護離職は最終手段
政府は「介護離職ゼロ」を掲げていますが、要介護認定者が年々増加していることもあり、介護を理由に介護離職者が増えているのが現状です。
しかし、いったん介護離職してしまうと、経済面での不安が大きくなるので、精神面や肉体面においても様々なストレスや不安に直面することになります。
近年は、介護離職を防ぐために、介護する人でも働きやすい勤務環境に見直し整備する動きも活発になっています。介護離職は最終手段にして、公的介護支援制度を利用するなど、仕事と介護の両立を目指すべく、その方向性を探っていくことが求められます。