シニア世代にとって、老後を健康的に過ごすことは大きな関心事です。歳を重ねるにつれて体力の衰えなど健康の悩みが多くなってきます。一方、厚生労働省が令和3年に行った中高年者の生活に関する継続調査では、50代からスポーツ・健康活動を日常的に行っている人は、健康状態が良いと回答した割合が88.5%と高い傾向にあったようです。
人生100年時代のなか、最近、健康寿命という言葉をよく耳にします。セカンドライフは、平均寿命ではなく健康寿命を意識して生活することが、これからの長い人生をより充実させるポイントのようです。
健康寿命を延ばす
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいいます。
厚生労働省が発表している調査によると、令和元年における男性の平均寿命が81.4歳に対し健康寿命は72.7歳、女性は平均寿命が87.5歳に対し健康寿命は75.4歳でした。
平均寿命と健康寿命との差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味しています。令和元年の調査では、平均寿命と健康寿命との差は、男性で8.7年、女性は12.1年です。今後、疾病予防と健康増進、介護予防などによって、この差を短縮することができれば、個人の生活の質の低下を防ぐことが可能になります。人生の後半戦は、できるだけ健康寿命を延ばすことによって、病気や寝たきり、介護生活などの「不健康な期間」をより短くすることが重要です。
また、厚生労働省が2019年に定めた「健康寿命延伸プラン」では、健康寿命を2040年までに男女ともに3年以上引き上げる目標を掲げ、健康づくりの施策が示されています。国としても、生産年齢人口の減少や社会保障費の増加といった課題に対応するため、健康寿命の延伸を重視しているようです。
シニア層の健康意識
消費者庁が行った「消費者意識基本調査」(2022年度)によると、シニア世代は、現在の健康状態について「筋力や体力の低下」や「もの忘れ等の認知機能の低下」や「糖尿病やがん等の病気」に多くの不安を抱えているようです。将来の健康状態については、不安を感じている人の割合が50歳代又は60歳代が最も高く、一方で、70歳以上の高齢者は60歳代と比べて不安を感じる人の割合が低くなっています。
シニア世代は全般的に「健康を優先した生活を送りたい」という意識が高く、その背景には高齢者の健康への不安や心配が影響していますが、特に50代、60代は将来の健康に対する不安が大きいようです。
生活習慣の改善
健康寿命が短くなる要因は、身体機能の低下と生活習慣病(がん・循環器系・糖尿病・慢性閉塞性肺疾患など)です。生活習慣病は日本人の死亡者数の6割を占めています。つまり、生活習慣を改善することで健康寿命が短くなるリスクを下げることができます。
生活習慣の改善には、まずは運動を行う習慣をつけることが大切です。厚生労働省では、「1日1万歩」歩くことを理想とし、目標値を男性で9200歩、女性で8300歩としています。10分歩くと、約1000歩ですので、たとえば、家の周りを散歩したり、近くに買い物に行くときはなるべく歩いたり、エスカレーターやエレベーターに乗らずに階段を上るなど、日頃から少しずつでも歩くことが大切です。
そのうえで、栄養バランスの良い食事を規則正しくとること、塩分を控えること、喫煙、適度な飲酒、質の良い睡眠、ストレスの解消などが重要となります。こうして生活習慣を改善することが生活習慣病の予防となり、健康寿命を延ばすことにつながります。
歳を重ねても日々の身体の状態を把握し、運動を続けることができれば、生活の質も向上し、より充実した人生の後半を過ごすことができます。けっして無理をせず、マイペースで続けることが大切です。シニア層になっても元気に生き生きと過ごしている方はたくさんいます。その若々しい姿を見て羨ましく思うこともあると思います。
2021年3月末の公的介護保険の要介護(要支援)認定者数は約687万人います。長寿社会に伴い、介護問題は決して他人事ではなく、身近な問題となっています。セカンドライフを楽しく生きるためには、自分の足で歩けて、誰の世話にもならずに暮らせることが大事です。
まとめ
多くの人は、できるだけ心身ともに「健康」な状態で長生きしたいという願望を持ちます。歳を重ねても日常生活の改善で健康寿命を延ばすことができます。運動することを難しく考えず、自分のペースで家の周りの散歩を始めるなど、毎日少しずつでも運動することを習慣にして健康で豊かな人生を送りたいものです。