人生100年時代、老後の3大不安はお金・健康・孤独といわれています。
多くの人が、定年後は第二の人生を楽しみたいと思っています。しかし、シニア世代の方のなかには、自分としっかり向き合い感情をコントロールしている方と孤独感と不安感に押しつぶされて、感情的になって孤立してしまう方がいます。
最近、高齢者のアルコール依存症が増加傾向にあるようです。また、高齢者による暴力・セクハラ・犯罪なども社会問題になっています。現代のストレスが多い社会のなかで、抑圧された高齢者が感情を爆発させて孤立する。これらの背景には、自分の居場所がなくなる寂しさや不安からくる孤独感があるようです。
自分の居場所がない寂しさ
定年後、厳しいビジネス社会から退いて、精神的に楽になるかと思っていたら、家には居場所がなく妻から煙たがれ、かえってストレスを感じることがあるようです。気がつくと、さみしさと退屈さで、昼間から飲酒するようになり、飲酒する限度を超えて、抑うつ的になるケースもあるようです。特に60代の男性は家庭で浮いたり、孤立しがちです。
日本最大のアルコール依存症治療期間である久里浜医療センターによると、20年前は入院患者の10%が高齢者の患者であったのが、最近は30%前後に増加しており、特に、定年後、自由な時間が増えたことで飲酒量も多くなり、依存症になる人が目立つようです。
定年後は、仕事中心で家庭を顧みなかったことを反省し、あらためて妻や家庭と向き合い、関係を深めることが大事です。
趣味などで気分転換
仕事中心の生活で趣味を持っていない人も、定年後に時間を持て余してしまい、寂しさを感じるようです。一方、熱中できる趣味がある方は、没頭することで寂しさを感じにくく、生き生きと過ごすことができます。
趣味のない方は、まずは、ウオーキングや囲碁、将棋など、ひとりで没頭できる趣味から始めるのがおすすめです。たまに、近所をジョギングすると、夫婦で散歩しているシニアの方々を多く見かけます。気分転換にもなりますし、何より健康管理に役立ちます。
一方で、サークルなどに入って仲間と一緒に趣味を楽しむことも大切ですが、人間関係でストレスを感じないようにすることが大事です。過去の自慢話やプライドのひけらかしは禁止です。周囲の反感を買って嫌われます。しかし、プライドが高くて、つい偉そうな態度をとって、周囲の反感を買ってしまう人は、想像以上に多いようです。
定年後、「現役時代の肩書」に頼らない生き方が大切です。
頑張りすぎず、力を抜いて生きる
定年後は、少しがんばることをやめて、力を抜いた姿勢でいることが大切です。目標が高く、生涯現役という気持ちで頑張りすぎる人は、自分の可能性が絶たれた途端に強い絶望感から「老人性うつ」のきっかけになることもあるそうです。
いつも完璧を求めると、不満や不安を抱えることになり、「こんなはずじゃなかったのに」となってしまうことが多くなります。ずっと気持ちを張り詰めていると、ちょっとした挫折や些細な失敗で心が折れてしまします。
物事に一生懸命取り組みことは大切が、年齢を重ねると、がむしゃらに行動する体力はなくます。その代わりに、経験値が増して行動に「ゆとり」が生まれます。
60歳からは、経験からくる「ゆとり」を持って、力を抜いた姿勢での「いい加減さ」が大切だと思います。60歳からの人生は、大人の生き方ができる時期です。
ひとり志向も結構楽しい
2023年に未来ビジョン研究所が行った「ひとり意識・行動調査」では、ひとりでいる方が好きかとの問いに対し、56.3%の人が好きと答えたようです。30年前と比べ12.8Ptと大幅に増加しており、ひとりに対する意識が大きく変化しています。
たまに大相撲観戦で両国国技館にいくと、大相撲ファンのなかに、ひとりで観戦しに来て、周りの方々と一緒に会話して相撲を楽しんでいる方を見かけます。まさにひとりを楽しんでいるわけです。見ず知らずの人とでも、一緒に楽しむことで孤独ではなくなるわけです。
年を重ねるにつれ、体力や気力も落ちてくるせいか、ひとりでいる方が楽だなあと感じるときがあると思います。日常生活では、穏やかな気持ちで趣味を楽しんだり、家族と過ごし、周りに常に会うような友達がいなくても、「年に1・2回でも会うと楽しいと思える友達が何人かいればそれでよし」と気楽に思うくらいが、孤独感を感じずに「おひとりさま」を楽しむコツだと思います。