先日、日本経済新聞に「定年後は意外と楽しい」という記事が出ていました。記事によると、未来ビジョン研究所が50代~70代を対象にしたアンケートで聞いた「定年後が楽しみ」、または「楽しいか」どうかという問いに対し、60代の67%が「楽しい」と答えたそうです。
ひと昔前は、定年というと「毎日やることがなく退屈」「お金が続くか心配」「孤独になるのでは」と多くの人がイメージしていましたので、このアンケート結果は予想外でした。
50代の方は、このネガティブなイメージからくる定年後に対して、漠然と不安を抱いていたはずです。しかし、定年が過ぎた60代の方は、実は人間関係や仕事のストレスから解放され、自由に楽しんでいるようです。50代の方も、定年後は「実は意外と楽しんだ」と前向きな気持ちになれば、漠然と抱く「老後不安」が解消されるかもしれません。
老いを自覚し無理をしないこと
人はみな、気持ち的にはいつまでも若いと思いがちですが、身体的にも精神的にも確実に加齢による衰えはやってきます。
たとえば、いつでも気軽に楽しめるランニングは日常生活に簡単に採り入れることができます。シニア世代の方の中にも、健康増進を目的にランニングを楽しんでいる方も多いと思います。多くの方は、せっかく走り始めたのだから、継続し習慣として定着させたい、大会に出て自分の頑張りを結果として残したいと思うものです。
しかし、私も経験していますが、現実はランニングを習慣として定着させるのは難しく、まして大会で自己ベストを更新することは大変なことです。歳を重ねるとともに記録タイムは年々遅くなり、精神的に日々の練習を続けることが困難になって離脱するリスクが高まっていきます。
筋肉には「速筋線維」と「遅筋線維」という種類があり、加齢による筋力低下は速筋線維で起こります。加齢によって速筋線維が萎縮する現象は、40歳を超えるとじわじわと起こりはじめるので、何も手を打たなければ「加齢によってスピードが落ちること」は避けることができないようです。
また、健康習慣に関する著書を持つ林英恵さんによれば、習慣化には決意・行動・行動の繰り返し・習慣の形成の4つのステージがあるそうです。習慣に変えたいと思ってもその半分しか根付くまで実行できないのが現実のようです。大事なのは挫折しそうになる時に頑張れる意志の強さだそうです。しかし、歳を重ねるとともに強い意志を持ち続けることは容易ではなく、精神的なストレスになります。
自分の好きなことを続けていくためには、自分自身の身体的・精神的な衰えを自覚することが大事です。そして、高い目標を掲げるのではなく、結果に執着せずに楽しむことを優先させて取り組むことが大切です。
夫婦円満であること
夫婦円満で仲が良いと、どんなに苦しいことがあっても困難を乗り越えることができます。
逆に夫婦仲が悪いと、家庭生活が息苦しく味気のないものになってしまいます。
これまで仕事中心で家庭を顧みなかった人は注意が必要です。妻や子どもと向き合う時間を大切にしないと、定年後に家にいることがプレッシャーになりストレスを感じるようになるようです。とくに60代の男性は家庭で浮いたり孤立してしまいがちです。
最悪離婚した場合、互いの年金だけでは生活が苦しくなり、さらに、寂しさから心の病になるかもしれません。どんどん悪循環に陥り、孤独死してしまったら、あまりにも悲惨です。二人で一緒に暮らしていればなんでもないものが、離婚によって不幸を招いてしまします。
夫婦仲良く人生をともにすることができて、はじめて幸せな人生といえると思います。できれば、定年前の50代から夫婦円満を意識して行動することをおすすめします。
会話のあまりない夫婦が、定年後一緒に行うといいのが散歩だそうです。ゴルフやテニスなど競争により勝ち負けがあるスポーツより、のんびり歩きながら会話をしてコミュニケーションをとることでお互いの信頼感を高めるようです。
友達を大切にすること
人間は人との関わりによって幸せを感じます。
とくに、いい人生だと思える瞬間には友達の存在があります。友達とは頻繁に会う必要はありませんし、元気でいることが確認できれば十分です。ちょっとした時間に会って、ただバカ話をして盛り上がるような関係です。会うのはせいぜい年に1回くらいがちょうどいいかもいれません。なかなか会えないが、それでも、心の中に「あいつらがいる」と思っていられることが生きていくうえでの頑張る力になります。
生き甲斐を持つこと
生き甲斐を持つことは、人生を楽しく生きるための支えになります。
目標に向かって一生懸命頑張ることで、身が引き締まり、充実感を覚えます。目標はなんでも構いません。絵を描くでもいいですし、楽器を演奏するでもいいのですが、大事なのは自己満足で終わらず、自分の活動を外に発信することだと思います。
たとえば、自分たちの演奏を聴いた人に楽しいと思ってもらえたり、自分の描いた絵を見た人の心の癒しになったなど、自分の生き甲斐として一生懸命取り組んだことが、周りの人の役に立てば、とてもうれしいことです。いままでは、会社のためや家族のために頑張ってきたことが、定年後は世のため人のために役に立つ人生として、自分になにができるのかを考えることは、とても大事です。
まとめ
人生の目的は、楽しく過ごし幸せになることです。また、幸福感は人との比較ではなく、自分の尺度や感情の中にあるものです。
幸福は自分を大切にすることから始まります。定年が過ぎた60歳以降は、自分の人生を完成させるための正念場です。定年後は余生ではなく、自分の人生をより楽しく終わらせるためのチャンスと捉え、前向きに過ごしたいものです。