退職金管理術!カギは企業型確定拠出年金!情報開示で効果的な運用?

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会社員の退職後の生活を支える企業年金。

厚生労働省の社会保障審議会の専門部会では、企業年金について運用状況を加入者以外にも「見える化」する議論を始めたようです。政府は、企業年金の効果的な運用につなげたいようですが、具体的にはどうなるのでしょうか。

少子高齢化が加速するなか、公的年金が財政的に厳しくなっており、公的年金制度の限界が懸念されています。そのような状況下、私的年金である企業年金の在り方についても見直されています。

企業年金とは

日本の年金制度は、公的年金である基礎年金(国民年金)と厚生年金、そして、私的年金である企業年金の3階建ての構造となっています。

企業年金とは、従業員の退職後の生活のために企業が原資を拠出して給付する年金です。公的年金に上乗せして支給されるので、企業年金に加入していれば、老後資金として受け取る額が多くなります。

企業年金は、もともとは退職金を分割して支払うようにしたものなので、各企業によってルールや種類、受け取り方などが異なります。また、福利厚生の一環なので、導入していない企業もあります。

企業年金の種類

企業年金は、大きく分けると確定給付型と確定拠出型の2種類があります。

確定給付型とは、加入した期間などに基づいてあらかじめ給付額が定められている年金制度です。一方、確定拠出型とは、拠出した掛金額とその運用収益との合計額を基に給付額を決定する年金制度です。加入者自ら運用を行います。

確定給付年金

確定給付年金は、将来の年金受給額が確定している制度です。したがって、当初の予定通りの運用ができていなくても給付額が変更できません。そのため、差額の負担を避けたい企業では制度の見直しが相次いでいます。

確定給付年金には、規約型と基金型の2つの制度があります。

規約型とは、企業が信託銀行や生命保険会社と契約を結び、年金資産の管理や運用は契約した金融機関が行います。規約型では、年金財政を毎年度確認し、積み立て不足がある場合は、掛金を増やさなければなりません、そのため、積立状況について従業員への開示が義務付けられています。基金型とは、企業とは別法人の基金を設立して、基金において年金資産の管理や運用を行います。

確定拠出年金

確定拠出年金は、企業型と個人型(iDeCo)の2種類があります。

加入者自らの判断で掛金の運用先を決め、その運用結果に応じて受給額が変動します。企業が運用利回りの不足分を負担しなくてよいため、最近は確定拠出年金(企業型)に移行する企業が増えています。

厚生労働省運営管理機関連絡協議会のデータによると、2010年3月末時点の加入者数は341万人でしたが、2023年3月末時点では805万人に増加しています。

確定拠出年金は、加入者の判断で運用するため、制度や運用についての教育が重要になります。加入者が運用リスクを負うため、加入者は開示情報の確認と内容を理解することが必要です。

また、マッチング拠出を採用すれば、従業員も一部掛金を追加拠出することができます。ただし、その場合は、事業主掛金を超えないこと、事業主掛金との合算で法的上限額を超えないことなどの要件を満たさなければならないので注意が必要です。

加入者数が増えている原因として税制優遇措置のメリットが挙げられます。

まず、運用益は非課税であることです。通常、金融商品の運用利益には約20%の税金がかかります。その税金が免除になるので、利益幅が大きくなります。

次は、給付金を受け取る際に、所得控除の対象となることです。一時金で受け取る場合は、退職所得控除の扱いになり、年金として受け取る場合は、雑所得扱いとなり公的年金等控除が受けられます。一般的には、退職所得控除の方が税制上有利とされています。

また、転職時に積立金を持ち運びできる点もメリットになります。近年、働き方の多様化に伴い、転職を選ぶ方が増えています。その際、前の会社で積み立てた資金を転職した会社に持ち運ぶことができます。転職先に企業型確定拠出年金がない場合や退職をして自営業になった場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)への移換も可能です。

企業年金のデメリット

2種類の企業年金にはそれぞれデメリットがあります。

共通のデメリットとしては、加入時に運用管理会社を選ぶことができないことです。そのため、加入時には運用管理機関や運用実績などを加入者に周知することが大事になります。

とくに、確定拠出年金は資産運用のリスクが伴うため、加入時の制度理解と商品選択はとても重要です。運用管理機関の紹介する金融商品や運用実績などの情報提供により、加入時には慎重に検討しなければなりません。併せて、投資教育を受けることが大切になります。

 ①確定給付企業年金

  • 自分の年金資産額が不明
  • 従業員は運用管理機関を選べない
  • 転職する際、確定給付企業年金の移転に制限がある

 ②確定拠出年金

  • 60歳になるまで現金化できない
  • 資産運用を行うリスクがある
  • 従業員は運用管理機関を選べない

フェーズの見える化

このようなデメリットを回避するためには、加入者のために運用の見える化の充実が大事になります。今後、資産運用状況に関する情報開示を進め、加入者が他社との比較や加入者の資産形成促進に向けた運用方法や商品ラインナップの開示促進が重要です。

  • 確定給付企業年金制度(DC)

  加入時 労働条件としての案内(選択制DB加入時の周知事項)

  加入期間中 将来の給付の見える化、企業年金の運用状況に関する加入者への周知

  退職時/受給時 受取方法を含めた手続き等の見える化、ポータビリティ

  • 企業型確定拠出年金制度(DC)

   加入時 商品選択等の情報提供や周知(選択制DC加入時の周知事項)

   加入期間中 運用実績等に係る見える化、将来の給付の見える化、継続加入者教育

   退職時/受給時 手続き等の見える化やポータビリテイ、受給中の運用情報の提供           

※ポータビリテイとは、転職等で会社が変わった場合でも、それまでの年金資産を持ち運 ぶことができることをいいます。

開示情報を確認

今後、少子高齢化が進むなか、公的年金の給付だけでは、安心した老後生活を保障することは厳しくなっていきます。企業年金は、老後保障を充実させる観点から、その重要度は増していくことが考えられます。

これからの人生を、より安心して暮らすためには、老後の必要生活費に足りない部分を企業年金を利用してカバーすることが大切になります。そのためには、運用状況の見える化により、他社との比較や運営管理機関が選定した運用方法やラインアップも含めた情報開示を見て、効果的な運用を行うことが重要になります。

(出典および参考資料)

 厚生労働省 確定拠出年金制度 

 厚生労働省 私的企業年金制度の概要(企業年金・個人年金)

 運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)」

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