元大関の貴景勝が現役引退と年寄「湊川」の襲名を発表しました。
28歳1ヵ月での引退は、昭和以降昇進で最高位が大関の力士では、元大関大受に次ぎ、2番目の若さのようです。近年は、首の痛みに悩まされていました。
貴景勝は、大関在位30場所(5年)勤め、優勝4回した名大関です。
横綱昇進を目指していましたが、気力、体力ともに横綱への夢には届かないと判断したようです。
武士道精神
貴景勝は大関昇進時の口上で、「大関の名に恥じぬよう、武士道精神を重んじ、感謝の気持ちと思いやりを忘れず、相撲道に精進して参ります。」と述べていました。
伝達式の口上では、力士が大事にしている言葉を述べることが多く、貴景勝の心のなかで武士道精神と言う言葉を大事にしていたことが伺えます。
武士道精神とは、責任意識や恥を知ることにより、義に殉ずる精神力、死をも恐れない自らの潔さを示します。
貴景勝は大関という地位の責任の重さと、地位を失ったときに現在の自分の力を客観的に見て、これ以上続けることが自分の恥をさらすことのように感じ、自ら潔く引退の道を選んだのではないでしょうか。
名誉を得る感覚には、個人の尊厳と鮮やかな価値の意識があります。
そして、名誉とはその階級の義務と特権を重んじること、つまり貴景勝にとっての名誉とは大関の地位が当たります。「体面を汚す」「恥ずかしくないのか」「人に笑われる」といった羞恥心という感性を大切にすることが、とても大切になります。
引き際の難しさ
老子の言葉に、「功遂げて身を退くは、天の道なり」とあります。
この言葉は、功績を上げたら身を引く、これこそが自然の道理に則った方法であるとの意味です。
欲にとらわれていると身の破滅を招くので、成功したら身を滅ぼす前にさっさと手を引きべきであると言っています。
最後まで欲をかいた結果、もともとあったものまで失ってしまうということです。
引き際を見極めないと、これまでの努力が水の泡になり、最後に情けない姿をさらしてしまうことになりかねません。
引き際が肝心
今までいた地位から身を退く時期はとても大切です。
物事が終わったあとに、問題を残さずに潔く身を引くことは、とても大事です。昔から立つ鳥、跡を濁さずと言い伝えられ、引き際の潔さを称える言葉とされています。
特にリーダーや高い地位にあった人は、粘り強く地位にしがみつくのではなく、引き際の潔さが重要ではないでしょうか。
貴景勝の引き際から見る教訓
人生において引き際の判断は難しいものです。
政治の世界でもご意見番やキングメーカーと称して、自分の権力を示すべく引退しない議員も見受けられます。時には政界を引退しているにも関わらず、大きな顔をして色々口出しする人もいます。
会社組織も同じです。よくわからない職位で仕事もせずに偉そうな態度を取っている方もいます。
組織が活性化するためには、世代交代が必要です。どんどん若い人に任せるべきです。今の若い人の方が勉強もしていて優秀な気がします。
武士道のごとく、潔く身を引いて次の世代に任せるような器量が必要です。いつまでも組織にしがみつき、いつまでも自分の存在感を示すことが恥ずかしいことと感じる社会にしたいものです。