医療費の負担が増加?後期高齢者医療費引き上げの2つの理由と問題点

暮らし

2024年度より、75歳以上の後期高齢者が加入する後期高齢者医療制度の保険料が段階的に引き上げ幅が拡大します。

保険料引き上げの背景には、後期高齢者の医療費増加による医療財政のひっ迫があるようです。しかし、主な収入が年金で医療にかかる頻度も多い高齢者にとって保険料の引き上げは、毎日の生活に大きな影響を与えます。

なぜ今、保険料が引き上げられるのか気になるところです。

後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度は、2008年に75歳以上を対象とした公的医療制度として創設され、75歳以上の「後期高齢者」等の医療費は、自己負担割合を原則として「1割」となっています。(所得が高い場合(現役並み)は2割負担、3割負担となります)

自己負担(1割)を超える部分は、現役世代からの支援金(約4割)と公費(約5割)でまかなっています。つまり、後期高齢者の医療費増加を、現役世代が支援する仕組みです。後期高齢者医療制度には、2021年現在、約1814万人の方が加入しています。

現役世代の保険料負担拡大

今回の保険料引き上げの理由のひとつは、現役世代の保険料負担が拡大していることです。この引き上げは、少子高齢化が進むなか、所得が増えない現役世代の負担をこれ以上増やさないための措置となります。

2008年の後期高齢者医療制度の創設以降、現役世代の保険料負担が拡大しつづけました。その対策として2023年5月に「全世代型社会保障」の構築を目指した「改正保険法」が成立し、後期高齢者医療制度の保険料上限の引き上げが可能となりました。

保険料引き上げの対象者

今回の保険料引き上げの対象者は、2024年度で年金収入が211万円を超える方と2025年度で年金収入が153万円を超える方です。これは、後期高齢者医療制度の被保険者のうち約4割の方が該当すると言われています。

たとえば、年収200万円の方は、2024年度の引き上げ対象者の条件を満たさないため、現状と変わりません。しかし、2025年度は対象者の条件を満たすため、保険料は年間で約3900円増えることになります。

今回の改正により、保険料の年間の上限額も、2023年度の年66万円から2024年度は年73万円、2025年度以降は年80万円へと段階的に大幅に増額されます。

出産育児一時金への拠出

後期高齢者の保険料が引き上げられるもう一つの理由は、「出産育児一時金」への拠出です。健康保険や国民健康保険の被保険者等が出産したときは、出産育児一時金が支給されます。支給額については、令和5年4月より42万円から50万円に引き上げられました。

出産育児一時金の財源は従来、公費のほか現役世代の公的医療保険が保険料から拠出していました。2019年には3800億円あまりが支給されています。

急激に少子化が進むなか、出産に係る経済的負担を軽減させるための財源は、現役世代だけではなく、すべての世代で負担すべきとの考えから、2024年以降は、後期高齢者医療制度からも一部負担することになりました。

3つの緩和措置

今回、高齢者全体の保険料負担軽減として3つの措置がとられます。

  • 出産育児一時金の後期高齢者からの支援対象額を1/2にする
  • 保険料の上限額を2年かけて段階的に引き上げ
  • 所得割のかかる一定以下の所得層について所得割を2年かけて段階的に引き上げ

今後の課題

政府は、今回の出産育児一時金増額のように、少子化対策は喫緊の課題と捉えています。しかし、少子高齢化により高齢者の人口は増加する一方で現役世代の人口は減少するため、その財源確保は厳しくなっています。

従来の高齢者医療制度は、社会的扶養の考え方により、現役世代が保険料を納めることで75歳以上の世代を財政支援していました。しかし、このままでは現役世代の負担増加は避けられません。今後も「全世代型社会保障」の構築により、高齢者の保険料負担が引き上げられる可能性があります。

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