少し驚いたニュースでした。
内閣府が公表した2026年版『高齢社会白書』によると、日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの4カ国の65歳以上を対象にした調査で、「今後も収入を伴う仕事をしたい(続けたい)」と答えた人の割合は、日本が39.0%と最も高かったそうです。
アメリカは24.3%、ドイツは19.8%、スウェーデンは19.1%。日本は実に4割近くにのぼります。
この数字を見て、「やっぱり日本人は働き者だな」と感じた人もいるかもしれません。私も最初はそう思いました。しかし、調査結果を読み進めていくうちに、少し複雑な気持ちになりました。
「やっぱりそうか」と感じた調査結果
今回の調査では、日本の高齢者が働きたい理由として最も多かったのは、「収入がほしいから」で48.2%。ほぼ半数にあたります。
この数字を見たとき、驚きよりも、『やはりそうなのか』という思いのほうが先に立ちました。
なぜなら、同年代の人と話していても、「年金だけで暮らしを支えていけるのだろうか」と不安を感じている声をよく聞くからです。
「もう十分働いたから、のんびり過ごしたい」という本音がありながらも、現実には生活のことを考えざるを得ないという気持ちを抱えている人は、決して少なくありません。
「働きたい」と「働かざるを得ない」は違う
私たちの世代は、子育てや住宅ローン、親の介護など、さまざまな責任を背負いながらここまで歩んできました。
そして今、今度は自分自身の老後について考える年代になりました。
物価上昇や健康不安から、何かあったときのために、少しでも備えておきたいと思うのは自然なことです。
そんな現実を思うと、「まだ働きたい」という言葉を、ただ前向きな意欲だけで受け止めることはできないように感じます。
「本当はもう少しゆっくり過ごしたい」
「元気なうちは働いていたほうが安心できる」
そんな本音を抱えている人も少なくないと思います。本来、「働きたい」と「働かざるを得ない」は、同じように見えて、その意味は大きく違います。
今回のおよそ4割の人が働き続けたいという数字の背景には、働くことへの意欲だけでなく、将来への不安や暮らしを守りたいという思いが強いのではないでしょうか。
だからこそ、この調査結果を単に「高齢者の就労意欲が高い」と捉えるだけでなく、私たち自身の老後をどう生きていくのか、安心して年齢を重ねられる社会とはどのようなものなのかを考えるきっかけにしたいと思います。
社会とのつながりのために働く
4か国の中でスウェーデンだけは、「自分の知識や能力を生かしたいから」が働く理由のトップでした。
生活のためだけではなく、自分らしさや社会とのつながり、生きがいを求めて働くという考え方です。
近年、日本でも「お金のためだけ」でなく、誰かに必要とされることに喜びを感じたり、社会とのつながりを持ち続けたいと願う人が増えているように感じます。
そんな「働きたい」という前向きな気持ちを、もっと素直に選べる社会になれば、老後の時間は今よりもっと豊かで、自分らしいものになるのかもしれません。
人生100年時代だからこそ必要なこと
今は「人生100年時代」と言われます。
65歳は人生の終わりではなく、新しい生き方を考えるスタート地点になりました。
だからこそ、これからの社会には多様な選択肢が必要だと思います。
・働きたい人は、自分の経験や能力を生かして無理なく働ける
・ゆっくり過ごしたい人は、経済的な不安なく引退できる
・地域活動やボランティアなど、お金以外の形で社会とつながる道もある
どれか一つが正解ではなく、それぞれが望む生き方を選べることが大切なのだと思います。
私たちは、どんな老後を送りたいのか
今回の調査結果を見ながら、私は「あと何年働くか」ではなく、「これからの時間をどう生きたいか」を改めて考えました。
『まだ働きたい』と思う人もいるでしょう。
『そろそろ自分の時間を大切にしたい』と思う人もいるでしょう。
どちらにも正解も不正解もありません。
大切なのは、自分の意思で選べることです。
働くことが義務ではなく、選択である社会。
長生きすることを不安ではなく楽しみと思える社会。
そんな日本になることを願わずにいられません。
おわりに
「日本の高齢者の4割が、今後も働きたい。」
この数字は、日本人の勤勉さを表しているのかもしれません。しかし同時に、老後の経済的不安という現実も映し出しています。
自分はあと何年働きたいのか。
どんな毎日を送りたいのか。
今回のニュースは、そんなことを静かに考えるきっかけを与えてくれたように思います。
この調査結果を「単なる高齢者の話」として読むのではなく、「数年後の自分の姿」と重ね合わせると見方は変わってきます。
「長生きしてよかった」
一人でも多くの人が、そう感じられる社会であってほしいと思います。
