「配偶者の死後、男性は認知症リスクが高まり、女性は生きがいが増える」
先日、新聞に掲載されていた記事を読み、日本社会の現状について改めて考えさせられました。
配偶者の死別における男女の違い
千葉大学が65歳以上のおよそ6万人を対象に行った調査によると、妻と死別した男性は、その後、認知症や死亡のリスクが高まる傾向が見られるそうです。
認知症の発症率は4〜6年後に約2.3倍、死亡リスクも3〜4年後には約1.9倍に増加していたとのことでした。また、配偶者を亡くした直後の男性は、気持ちの落ち込みが強くなり、幸福度も低下する傾向が確認されたといいます。
一方で、夫を亡くした女性には健康面で大きな変化は見られず、数年後には「生きがいがある」と感じる方が、むしろ増えていたそうです。
この結果は、単なる男女差というよりも、日本社会が長年築いてきた家族観や生き方の違いを映し出しているのではないでしょうか。
昭和時代の価値観
高度経済成長期以降の日本では、「男性は仕事、女性は家庭を守る」という価値観のもとで社会が成り立ってきました。
多くの男性は仕事を人生の中心に据え、家庭での日常や地域とのつながりについては、妻に支えられながら歩んできました。
そのため、退職によって社会との接点が薄れた後に、さらに最も身近な存在である妻を失うことで、生きがいや生活の拠り所までも失ってしまうことも少なくありません。
高齢男性の孤立
食事の支度や健康への気配り、何気ない日々の会話など、長年、暮らしをともに支えてきた伴侶を失うことで、多くの男性は生活の張り合いや人とのつながりを一度に失ってしまいます。
とりわけ、仕事中心の人生を歩んできた男性ほど、退職後は地域や友人との関係が希薄になりやすく、配偶者との死別をきっかけに孤立へと向かうケースが多いようです。
多分、外出の機会や会話の量が減り、自宅で過ごす時間が増えることは、心身の活力の低下だけでなく、認知機能の衰えにもつながっていくのでしょう。
こうした姿は、超高齢社会を迎えた日本が抱える「高齢男性の孤立」という深刻な課題を象徴しているように感じられます。
人とのつながりの大切さ
その一方で、女性は比較的、友人関係や地域社会とのつながりを保ちながら暮らしている人が多い傾向にあります。
趣味の集まりや近所付き合い、子どもや孫との交流など、家庭の外にも複数の居場所や役割を持っている人は少なくありません。
そのため、最愛の伴侶を失うという深い悲しみを経験しながらも、周囲とのつながりに支えられ、時間をかけて新たな生きがいや日々の楽しみを見いだしていけるようです。
もちろん、女性にも老後への不安はあります。経済的な問題や長いひとり暮らしへの不安、将来の介護への備えなど、多くの課題を抱えていることに変わりはありません。
しかし今回の調査結果は、老後を心豊かに生きていくうえで、「人とのつながり」が大きな支えとなることを、改めて示していると思います。
老後に大切なこと
これからの日本では、超高齢社会がますます進んでいくと考えられます。平均寿命が延びる一方で、「長く生きること」が、そのまま「心豊かに生きること」につながるとは限りません。
老後を穏やかに、そして充実して過ごすために本当に大切なのは、経済的な備えや健康維持だけではなく、社会の中に「自分らしくいられる居場所」を持つことなのではないでしょうか。
そのためには、現役時代から会社以外にも人とのつながりを育み、趣味や地域活動などを通して社会との接点を持ち続けることが大切です。
また、男女を問わず、家事や身の回りのことを自立して行える生活力を身につけておくことも、これからの老後には欠かせないでしょう。
そして何より重要なのは、「支えられる存在」であるだけでなく、自らも社会との関わりを持ち続けようとする意識です。
配偶者は人生においてかけがえのない存在です。しかしその一方で、たとえ一人になったとしても、自分らしさを失わず、穏やかに人生を歩んでいける力を育んでおくことが、これからの時代にはより一層求められているように思います。
まとめ
今回の調査結果は、日本の高齢社会において、「支えられること」を前提とした老後から、自立した暮らしを保ちながら、人とのつながりを大切に生きる老後へと意識を転換していくことの重要性を、超高齢社会を生きる私たちに示しているようです。
